アナルコ・キャピタリズム研究(仮)ブログ

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じゃんけんからメカニズムデザイン5

わたなべじゃんけん」は通常のじゃんけんと同じ均衡と資源配分の方法を作る。(計算は別掲。)わたなべじゃんけんはやり方次第だが、場合によっては資源配分にかかる取引費用を劇的に節減する可能性がある優れたメカニズムである。皆が納得するようなフェアな制度である。

スローガンは「資源の有効利用のためいい制度を設計しよう」。メカニズムデザインは効率的な資源配分を実現するためのインセンティブデザインである。

(終わり)

■メカニズムデザイン入門のためのサイト

【市場を創る経済学:マーケット・デザインが切り開く新地平】(安田洋祐)
http://blog.livedoor.jp/yagena/archives/50474651.html
ECONO斬り!!のyyasudaさんが日経新聞「経済教室」に載せたもの

メカニズムデザインの理論と実務(109274)
http://109274.nobody.jp/mechanism.html
謎の経済学者による。とても勉強になる。

人を正直にするのは高くつくのだ?メカニズムデザインの考え方(小島寛之)
http://wiredvision.jp/blog/kojima/200710/200710272250.html
クラーク=グローブス・メカニズムの説明

What is Mechanism Design?
Explaining the research that won the 2007 Nobel Prize in Economics. (Alex Tabarrok)
http://www.reason.com/news/show/122998.html
リバタリアン経済学者による解説

■わたなべじゃんけんの最適戦略

わたなべじゃんけん」ではやはり全員がグー・チョキ・パーを1/3ずつの確率で出すことがナッシュ均衡になる。

いまAの相手B, Cがいずれも1/3ずつの確率で各手を出すとする。すると確率分布とAの勝ち手は下のようになる。

B-C 確率 Aの勝ち手
1-1 1/9  2
1-2 1/9  1
1-3 1/9  3
2-1 1/9  1
2-2 1/9  3
2-3 1/9  2
3-1 1/9  3
3-2 1/9  2
3-3 1/9  1

(合計が4または7になるときAの勝ち)

表より
Aが1を出して勝つ確率は (1/9)*3= 1/3
Aが2を出して勝つ確率は (1/9)*3= 1/3
Aが3を出して勝つ確率は (1/9)*3= 1/3

何を出そうと勝つ確率は1/3となる。これは言い換えればどんな確率で各手を出そうとも勝つ確率は同じということ。つまりどんな戦略も最適反応であり、特に1/3も最適反応となる。プレーヤーB, Cについても同じことが言えるから、A, B, C = (1/3, 1/3, 1/3) はナッシュ均衡となる。

■anacapの主張

制度は市場で作られるべき。
政府はいつも悪いデザインのゲームしか作らない。
政府にはいいメカニズムを作るインセンティブがない。
政府の設計する制度はいつもうまくいかない。
いつも不正が可能で抜け道がある。非効率。
■メカニズムデザイン | comments(0) | trackbacks(0) |

じゃんけんからメカニズムデザイン4

じゃんけんではナッシュ均衡(各人グー・チョキ・パーを等確率で出す)がプレイされるとき、それ自体がコイントスのような偶然装置(抽選機械)になり、平等な資源配分(均衡において各人の期待利得は等しい)を保証するメカニズムとなる。

メカニズムデザイン的に考えると、まず始めに「誰にでも等しく勝つチャンスがある」という実現したいアウトカム(結果)がある。これは言い換えれば「各人の期待利得が等しい」ということであり、一般的に好まれる「資源配分の仕方」(仲良くn等分)だろう。そして次にこのアウトカムを実現するような方法(ゲーム)を考える。そこでじゃんけんは一つのいい方法(契約とも見ることができる)になるだろう。

メカニズムデザインは(ある目的を遂行するために)ある方法を作るということにポイントがあって、それは言ってみればゲーム探しのゲームである。ゲーム理論家の渡辺隆裕はじゃんけんのオルタナティブ・メカニズムとして「わたなべじゃんけん」を提案した。

これは麻雀の配牌にも使われる Modular arithmetic の応用であり、仮に100人でじゃんけんをしたとしても一発で勝者が決まるという優れものだ。(両手で100までの数字を表現することは簡単にできる。)

<参考:麻雀の配牌方法>

麻雀では親が2つのサイコロを振り、出た目の合計をプレーヤー数で割った余りによって開門場所を決める。4人打ちの場合、余りが1なら東家、2なら南家、3なら西家、0なら北家の牌山から牌を取り始める。

これは言い換えれば出た目が5, 9なら自分、2, 6, 10なら右、3, 7, 11なら対面、4, 8, 12なら左ということになる。(ウニ(右2)、サシ(左4)などと覚える。)該当するプレーヤーの右手側に出た目の合計を残し、親から順に4枚ずつ取っていく。

ちなみに7が出る確率が最も高い(6/36)ので、対面の右7が最も開門確率の高い場所ということになる。このことは次のサイトで確認できる。

骰子の確率:昭7年3月 林茂光麻雀研究所 発行の麻雀誌「麻雀」に掲載されたサイコロの出目に関する論考
http://www.asamiryo.jp/cmat02.html


(続く)
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じゃんけんからメカニズムデザイン3

会社のお金(税金)で購入したお菓子(公共財)が不評な上食われ放題だったということだろうか、ZEROBASEの石橋さんは「配給制を廃止」し、オフィスグリコを導入したという。

メカニズムデザインの言葉で言えば、オフィスグリコ

「ある目的・望ましいアウトカム・資源配分を」
「均衡・結果として達成できる」
「方法・ルール・ゲーム」

であり、より意味不明な言い方をすれば「ある選択関数をナッシュ遂行可能な一つのメカニズム」ということになる。(もっともこの場合それは価格メカニズムそのものであるが。)

さてここで問題である。じゃんけんとオフィスグリコの共通点は何か。それはどちらも資源配分装置ということである。

一般的なメカニズムデザインは

1. 公共財の供給で本当の評価額(私的情報)を供出させるようなメカニズム
2. オークションで本当の評価額(私的情報)を入札させるようなメカニズム
3. 学校で教師が生徒に/会社で上司が部下に本当の努力(私的情報)をさせるようなメカニズム

といった情報とインセンティブに関わるようなものだが、このエントリでは(無理やり)身近な「じゃんけん」を資源配分メカニズムと見て、メカニズムデザインの考え方を紹介してみたいと思う。

(続く)
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じゃんけんからメカニズムデザイン2

メカニズム・デザイン(mechanism design),あるいは遂行理論(implementaton theory),は選挙制度・契約・オークション・官僚組織の意思決定システム・公共財の供給方法,などを比較・設計することを目的とする,応用範囲の広い経済理論である.「どのようにメカニズム(契約や法制度などのルール)を定めれば,ひとびとの希望を尊重しつつ社会的に望ましい状態を達成できるか?」といった問題をあつかう.ひとびとは通常自分に不利になる情報を提供したがらないので,単に希望を聞くだけではダメである.

三原麗珠『メカニズム・デザイン レクチャー・ノート』(1999)(PDF)より

中学校では少ない資源の中で娯楽水準の最大化が行われていた。新しい楽しいゲームを作るインセンティブは政府(学校)にはもちろんなく、むしろそれを規制・禁止しようとさえしたが、市場(放課後の教室)はイノベーションが生まれる空気に満ちていた。

メカニズムデザインあるいは制度設計というと何か社会主義のにおいがするかもしれないが、実際は民間のオークションから税制度、企業間の契約までを扱えるイデオロギーフリーな広いフレームワークのことである。(この点はやはり三原麗珠の『情報効率性とインセンティブ・コンパティビリティ:ノート』(1996)に言及がある。)

私はメカニズムデザインなどをまとめてゲーム理論と言ってしまうが、メカニズムデザインは「(大なり小なり)社会内における望ましい(効率性・公平性)制度のデザイン」ということである。要するにゲームを作るということだ。

(続く)
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じゃんけんからメカニズムデザイン

私の通っていた中学校は不良の集まりで本当におもしろかった。一方で有名なスパルタ塾に通っていた私にとって中学校は遊びに行くようなものだった。

色々な遊びがあったが私が一番夢中になったのは賭け事である。休み時間の教室は複数のテーブルで構成される賭場になっていた。携帯性に優れたゲームであるトランプや花札、サイコロ等を様々なバリエーション(ルール)で楽しんだ。

賭け金は基本的に小遣いを超えない程度。現金がなくても参加できるよう結果だけ帳面に記録(後払い)。清算は恣意的で強制力もなし。平和的で友好的な支払いが行われるのみ。そもそも胴元がいないので、長期では確率的に配分が均等化される。つまり期待値はゼロで、すべてがチャラということである。

放課後などはスリルの度合いを高めるために賭け金のレートを上げることもあり、その場合は一日の負債が1ヶ月の小遣いぐらいになったりすることもあった。しかしそんなときは支払いは行われない。それでよかったのだ。友達には代わりに敬意を払った。彼にとっては「あいつは強い」という評判こそが儲けだったのである。

(続く)
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