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クーポンと合言葉

今年の3月、機材が準備できなかったため一部地域から試験的・段階的に始めたマックフルーリーは逆に未販売地域の消費者の興味を掻き立て、マクドナルドのマーケティング担当者の予想以上にネットで話題が広まった。ゴールデンウィークには通常の300円が150円になり、さらにカウンターで「フルリレロ〜!」という合言葉を言うと100円になるキャンペーンを携帯のメルマガなどで告知したところ今度は中高生の間でブームになったという(2007年8月18日・日経新聞より)。

これは通常のクーポン割引とは性質を異にする。低所得の人間でもこんなことを堂々と言える人間は限られる。女子小中学生の集団がわいわい言っているところぐらいしか想像できない。

<参考1:クーポンは価格差別の代表的な例で情報の非対称性からそれを説明できる。企業が利益を最大化するためにはできるだけ消費者のタイプを見分けてそれに応じた価格付けをしたほうがいい。つまり所得が低い層には値段を安くし所得が高い層には高くする。クーポンはそのための一つの手段でそれによって中高生のような所得が低い層を抽出し低い価格をつけることができる。>

新手の価格差別かと思い「合言葉 割引」でググってみた。すると風俗店の情報がたくさん出てくるというかそれしか出てこないことを発見した。よって合言葉による価格差別はかなり特殊だが新手でもなんでもないことになる。(風俗店の合言葉はさぞ恥ずかしい言葉なのだろうと思いきや「フルリレロ〜!」に匹敵するようなものはあまりなく、だいたいは簡単で平凡なもののようである。)

このマクドナルドの事例で気付くのはクーポンと合言葉(パスワード)は同じであるということだ。クーポン戦略は情報をもたない側がもつ側に選択肢を提示しその行動からタイプを見分けようとするスクリーニング戦略である。相手が関係者かどうかを知るためのいわゆる合言葉も一種のスクリーニングである。

<参考2:ゲーム理論ではクーポン戦略を不完備情報の動学ゲームとして定式化できる。

第1段階:自然の選択(低所得者かどうか)
第2段階:客の選択(クーポンを使うかどうか)
第3段階:店の選択(値引きするかどうか)

・店も低所得者も互いに安い価格で取引したいという利得設定
・自然の選択を客は見れるが店は見れない(情報の非対称性)
・店はクーポンの有無から相手のタイプを確率的に予想

たとえば店側はクーポンは低所得者しか使わないと思っているなら、その使用を観察した時点で低所得者であると断定し値引きをするだろう。これは店の一つの確率的信念と戦略の組み合わせである。そこでもし一方で客が「自分が低所得者ならクーポンを使う。そうでないなら使わない」という戦略をとっているならこれらと整合的になりベイズ完全均衡を構成する。>

上のことは一般の合言葉の文脈に置き換えても成り立つ(低所得者→関係者、クーポン→合言葉、値引き→中に入れるなど)。クーポンと合言葉は数学的・論理的に同じなのだ。

だがマクドナルドがこの恥ずかしい合言葉という特殊クーポンを使ったことは合理的だったのか?低所得者層のうちある層を排除しても女子小中学生にアピールするのがよいと判断したのはなぜか?それは商品がアイスクリームだったからである。
■クーポンは合言葉と同値である | comments(0) | trackbacks(0) |